この期に及んで

この頃、NHKの連続テレビ小説、所謂”朝ドラ”を観ている。
朝から元気になれる、面白いドラマでもあるが、特に、ヒロインの母親役の女優さんの大ファンになってしまった。
初めの内は、その化粧気の無い、自然な容姿に好感を抱いたのをきっかけに観ていたが、その番組に関連して行われた対談を見てからは、彼女をいよいよ好きになった。

彼女にとって、今回の役柄で苦労したのが台詞の少なさだったと言う。
台詞と台詞の間の演出が難しい課題だったそうだ。

役者という仕事は台詞を言うのが当たり前なので、台詞の無い場面では、どこまで内に秘めた思いを外に表現出来るか。
そうした心の内に流れる、目に見えない力でドラマが盛り上がってくるとの事であった。

確かに、それまでの彼女の演技や表情を思い浮かべるとしみじみと味わい深く感じられる。
また、昔からあった「見えるところ以上に見えないところを大切にする」という精神に通じる向き合い方で、今回の難しい役どころを見事に演じた彼女は、これからますます楽しみな女優さんだと思う。

余談ながら、米寿を迎えた私。
この期に及んで、今更かも知れないが、この談話をきっかけに、なんとなく自分を振り返ってみた。
そして、そのような見えないパワーが自分の内にもあるのだとしたら、自分に出来ることを精一杯やり、素直に生きていくことで輝きたいと、今、思う。

終